終点分析法と初速度法。

名前だけを見ると、

  • 初速度法=反応の最初を見る
  • 終点分析法=反応の最後を見る

と覚えればよさそうに思えます。

しかし、国家試験ではそれだけでは解けません。

特に間違えやすいのが、

「初速度法では、0次反応と1次反応のどちらを使うのか」

という点です。

実は、初速度法で基質濃度を測る場合と、酵素活性を測る場合では考え方が異なります。

第69回臨床検査技師国家試験の問題を使って整理していきましょう。

国試問題|第69回 臨床検査技師国家試験 午前 問題32

Michaelis-Menten の式について正しいのはどれか。 2 つ選べ。
ただし、[S]は基質濃度、Vmax は最大反応速度、Km は Michaelis 定数とする。

1.Km 値<<[S]のとき 1 次反応に近似する。
2.初速度法による[S]測定は 0 次反応領域で行う。
3.Km 値が大きいほど酵素と基質の親和性は大きい。
4.Km 値は反応速度が Vmax の 1/2 を示す[S]である。
5.終点分析法による[S]測定には Vmax が大きい酵素を使用する。

 

正答

4、5

です。

この問題では、Michaelis-Menten式だけでなく、

  • 0次反応と1次反応
  • 初速度法
  • 終点分析法
  • KmとVmax

の関係まで理解できているかが問われています。

順番に考えてみましょう。

まず押さえる|0次反応と1次反応

Michaelis-Menten型の酵素反応では、反応初速度 (v) は、

v = Vmax ×[S]/(Km+[S])

で表されます。

ここで、

  • v:反応初速度
  • Vmax:最大反応速度
  • [S]:基質濃度
  • Km:Michaelis定数

です。

KmとVmaxの意味を先に整理しておきたい方は、「KmとVmaxとは?|ミカエリス定数・基質親和性との関係をわかりやすく解説」も参考にしてください。

KmとVmaxとは?|ミカエリス定数・基質親和性との関係をわかりやすく解説酵素反応速度論では、Km(ミカエリス定数)とVmax(最大反応速度)がよく登場します。 まず、この2つの違いを押さえておきましょう...

ポイントは、[S]とKmのどちらが大きいかです。

[S]≪Kmなら1次反応に近づく

基質濃度[S]がKmより十分に小さい場合、

Km+[S]≒Km

と考えることができます。

そのため、

v ≒(Vmax/Km)×[S]

となります。

つまり、反応速度vは基質濃度[S]にほぼ比例します。

したがって、

[S]≪Km → 1次反応領域

と考えます。

[S]≫Kmなら0次反応に近づく

反対に、[S]がKmより十分に大きい場合、

Km+[S]≒[S]

となるため、

v ≒ Vmax

です。

この状態では、基質濃度をさらに増やしても反応速度はほとんど変化しません。

したがって、

[S]≫Km → 0次反応領域

と考えます。

まずは、

  • [S]≪Km → 1次反応
  • [S]≫Km → 0次反応

を押さえておきましょう。

選択肢を順番に見てみよう

1.Km 値<<[S]のとき 1 次反応に近似する。

誤りです。

Km<<[S]は、

[S]≫Km

ということです。

この場合、

v ≒ Vmax

となり、反応速度は基質濃度[S]にほとんど依存しません。

したがって、1次反応ではなく、

0次反応に近似します。

2.初速度法による[S]測定は 0 次反応領域で行う。

誤りです。

ここは、この問題で最も重要なポイントです。

問題文には、

「初速度法による[S]測定」

と書かれています。

つまり、測定したいのは**基質濃度[S]**です。

初速度から[S]を求めるためには、

基質濃度が高い
→ 反応速度が速い

基質濃度が低い
→ 反応速度が遅い

という関係が必要です。

つまり、

反応速度が[S]に依存する条件

を使わなければなりません。

[S]≪Kmの領域では、

v ≒(Vmax/Km)×[S]

となるため、反応速度は[S]にほぼ比例します。

したがって、

初速度法による[S]測定 → 1次反応領域

です。

0次反応領域ではありません。

「初速度法=1次反応」ではない

先ほど、

初速度法による[S]測定では1次反応領域を使う

と説明しました。

しかし、

初速度法そのものが必ず1次反応というわけではありません。

例えば、血清中のAST、ALT、LD、CKなどの酵素活性を初速度法で測定する場合には、基質を十分な量加えます。

つまり、

[S]≫Km

となる条件です。

すると、

v ≒Vmax

となり、基質濃度の影響を受けにくくなります。

この条件では、測定された反応速度が試料中の酵素活性を反映しやすくなります。

したがって、

初速度法で測るもの 基質濃度の条件 基質に対する反応
基質濃度[S] [S]≪Km 1次反応
酵素活性 [S]≫Km 0次反応

となります。

国家試験では、

「初速度法」という言葉だけで判断せず、何を測定しているのかを見る

ことが重要です。

ASTやCKなどで、目的反応を別の酵素反応につないで測定する仕組みについては、「共役酵素とは?|JSCC勧告法で使う・使わない酵素を国試問題で解説」で解説しています。

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3.Km 値が大きいほど酵素と基質の親和性は大きい。

誤りです。

国家試験では、

Kmが小さいほど、酵素と基質の親和性が高い

と整理します。

Kmが小さいということは、低い基質濃度でもVmaxの1/2の反応速度に到達できるということです。

したがって、この選択肢は逆です。

なお、厳密にはKmと基質の解離定数は同じものではありませんが、国家試験では基本的に、

Kmが小さい → 基質との親和性が高い

と押さえておけばよいでしょう。

KmやVmaxについて詳しく確認したい場合は、
「KmとVmaxとは?|ミカエリス定数・基質親和性との関係をわかりやすく解説」
も参考にしてください。

4.Km 値は反応速度が Vmax の 1/2 を示す[S]である。

正しいです。

Michaelis-Menten式に、

[S]=Km

を代入すると、

v=Vmax/2

となります。

したがってKmは、

反応速度がVmaxの1/2になるときの基質濃度

です。

この選択肢は正しいので、4は正答です。

5.終点分析法による[S]測定には Vmax が大きい酵素を使用する。

正しいです。

終点分析法では、反応を十分に進めたあとに測定します。

例えば、

基質 → 生成物

という反応を利用して基質濃度を測る場合、測定したい基質を十分に生成物へ変換する必要があります。

そのため、測定時間内に反応を十分進められることが重要です。

Vmaxが大きければ反応を速く進めることができるため、

終点分析法による[S]測定では、Vmaxが大きい酵素が適しています。

したがって、5も正答です。

ただし、

Vmaxが大きいほど最終的な生成物量が増える

という意味ではありません。

同じ量の基質を十分に反応させたのであれば、最終的な生成物量はもともとの基質量によって決まります。

Vmaxが大きいことの利点は、

測定時間内に反応を十分進めやすいこと

です。

終点分析法と初速度法を比較

ここまでを整理しておきましょう。

初速度法

反応が始まって間もない時間帯の、

一定時間あたりの変化量

を測定する方法です。

つまり、

「どのくらい速く反応しているか」

を見ています。

ただし、利用する反応領域は測定対象によって異なります。

  • 基質濃度を測る → 1次反応領域
  • 酵素活性を測る → 基質に対して0次反応領域

です。

終点分析法

反応を十分に進めたあと、

最終的にどれだけ変化したか

を測定する方法です。

基質濃度を測定するときには、限られた測定時間内に基質を十分反応させることが重要になります。

そのため、Vmaxが大きい酵素が適しています。

国試ではこの順番で考える

初速度法・終点分析法が出てきたら、次の順番で考えると迷いにくくなります。

① まず何を測定しているか確認する

特に初速度法では、

  • 基質濃度[S]なのか
  • 酵素活性なのか

を最初に確認します。

② [S]とKmの関係を見る

  • [S]≪Km → 1次反応
  • [S]≫Km → 0次反応

です。

[S]とKmの関係を実際の数値で確認したい方は、「Km値が2 mMのときVmaxの98%を得る基質濃度を求める問題」も解いてみてください。

【過去問解説】Km値が2mMのときVmaxの98%を得る基質濃度は?ミカエリス・メンテン式で計算Km=2 mMの酵素で、最大反応速度Vmaxの98%を得るために必要な基質濃度は、計算上 98 mM です。 したがって、国家試験...

③ 終点分析法なら「十分に反応させる」と考える

終点分析法による基質濃度測定では、

測定時間内に基質を十分反応させる

ことがポイントです。

そのため、Vmaxが大きい酵素が適しています。

ここまで理解できたら、次は問題演習へ

Km・VmaxやMichaelis–Menten式は、意味を理解したあとに実際の問題を自力で解けるか確認することが重要です。

「酵素反応速度論 国試対策20問」では、Km・Vmax、Michaelis–Menten式、酵素阻害、Lineweaver–Burkプロットなどを20問で段階的に演習できます。

まとめ

第69回の問題では、次の4点を押さえておけば解くことができます。

  • [S]≪Km → 1次反応
  • [S]≫Km → 0次反応
  • 初速度法で[S]を測る → 1次反応領域
  • 終点分析法で[S]を測る → Vmaxが大きい酵素を使う

さらに、初速度法で酵素活性を測定する場合には、

[S]≫Kmとして、基質に対して0次となる条件を使う

ことも区別しておきましょう。

このテーマでは、

「初速度法=1次反応」

と丸暗記するのではなく、

何を測定しているのか

を確認することが、問題を解くためのポイントです。

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Km・Vmaxの意味だけでなく、実際の問題の中でどのように使うのかまで確認しておくと、酵素反応速度論の問題が解きやすくなります。