Kmは、反応速度がVmaxの1/2になるときの基質濃度。

Vmaxは、基質濃度を十分に高くしたときに反応速度が近づく最大反応速度。

競合阻害では、見かけのKmが大きくなり、Vmaxは変わらない。

ここまでは覚えていても、実際の問題で使いこなせる知識になっているでしょうか。

酵素反応速度論では、用語を覚えていることと、数値や実験結果の中でその知識を使えることに少し差があります。

ここでは、Km・Vmax、Michaelis–Menten型の反応、酵素阻害、Lineweaver–Burkプロットについて、5問で確認してみましょう。

Km・Vmaxや酵素阻害を一度勉強したあと、「問題になっても解けるか」を確認したい方を想定しています。

臨床検査技師国家試験の勉強をしている方だけでなく、医療系学部の定期試験などで生化学を勉強している方にも使える内容です。

正解できたかだけでなく、

「なぜその答えになるのか説明できるか」

も意識しながら考えてみてください。

問1 最大の測定値とVmax

ある酵素について、基質濃度を変えて反応初速度を測定したところ、次の結果が得られました。

基質濃度[S](mmol/L) 反応初速度 v(μmol/min)
0.5 16
1.0 28
2.0 42
4.0 54
8.0 61

この結果の解釈として、最も適切なのはどれでしょうか。

  1. Vmaxは61 μmol/minであると断定できる
  2. Kmは1.0 mmol/Lであると断定できる
  3. 基質濃度を2倍にすると、反応速度も常に2倍になる
  4. 基質濃度が高くなるにつれて反応速度の増加は小さくなっており、反応速度が限界値へ近づいていると考えられる
  5. [S]=8.0 mmol/Lでは、すべての酵素分子に必ず基質が結合している

 

問2 1つの測定値とKm・Vmax

ある酵素について、

[S]=3.0 mmol/Lのとき、v=30 μmol/min

という測定結果が得られました。

この結果について、最も適切なのはどれでしょうか。

  1. Km=3.0 mmol/Lである
  2. Vmax=60 μmol/minである
  3. Km=3.0 mmol/L、Vmax=60 μmol/minである
  4. この1組の測定値だけから、KmとVmaxの両方を一意に決めることはできない
  5. vが30 μmol/minなので、Km=30 mmol/Lである

 

問3 非競合阻害と基質濃度

非競合阻害について、ある学生が次のように説明しました。

「非競合阻害では基質と阻害剤が同じ部位を取り合わないので、阻害剤があると基質濃度を増やしても反応速度は変化しない」

この説明について、最も適切なのはどれでしょうか。

  1. 正しい。非競合阻害では反応速度は基質濃度に依存しない
  2. 正しい。非競合阻害ではKmもVmaxも0になる
  3. 誤り。非競合阻害でも基質濃度を増やせば反応速度は上昇するが、阻害剤がない場合より低いVmaxへ近づく
  4. 誤り。非競合阻害では基質を増やすとVmaxが元の値まで回復する
  5. 誤り。非競合阻害では必ずKmが上昇する

 

問4 Lineweaver–Burkプロットへの変換

ある酵素反応で、

[S]=0.25 mmol/L
v=20 μmol/min

という測定値が得られました。

この値をLineweaver–Burkプロット上の1点として表す場合、横軸1/[S]と縦軸1/vの組合せとして正しいのはどれでしょうか。

  1. 横軸0.25、縦軸20
  2. 横軸0.05、縦軸4.0
  3. 横軸4.0、縦軸0.05
  4. 横軸-4.0、縦軸0.05
  5. 横軸20、縦軸0.25

※単位は選択肢では省略しています。

問5 Km・Vmaxと反応速度の比較

同じ基質に作用する酵素Aと酵素Bについて、次の値が得られました。

Km Vmax
酵素A 1 mmol/L 50 μmol/min
酵素B 4 mmol/L 100 μmol/min

この2つの酵素の反応速度について、最も適切なのはどれでしょうか。

  1. Kmが小さいため、すべての基質濃度で酵素Aの方が速い
  2. Vmaxが大きいため、すべての基質濃度で酵素Bの方が速い
  3. 基質濃度によって、Aの方が速い場合とBの方が速い場合がある
  4. Kmが異なるため、2つの酵素の反応速度を比較することはできない
  5. Vmaxが異なる場合、Michaelis–Menten式は使えない

 

正答を確認する

5問すべて答えを決めてから確認してみてください。

問1:4 問2:4 問3:3 問4:3 問5:3

ここから、それぞれ確認していきます。

問1の解説

正答:4

基質濃度を高くするにつれて、

16 → 28 → 42 → 54 → 61

と反応速度は上昇しています。

ただし、基質濃度を増やしたときの反応速度の増加は、次第に小さくなっています。

Michaelis–Menten型の反応では、基質濃度が高くなるにつれて反応速度はVmaxへ近づきます。

したがって、このデータから、

反応速度が限界値へ近づいている

と考えることはできます。

一方、

測定した中で最も大きな値=Vmax

とは限りません。

今回の61 μmol/minより少し大きな値へ近づいている可能性もあります。

問題に数値が出てきたときは、すぐに数字を式へ入れる前に、

「この情報から本当にどこまで言えるのか」

を確認することが大切です。

ポイント:最大の実測値を、そのままVmaxと考えない。

問2の解説

正答:4

Michaelis–Menten式は、

で表されます。

今回分かっているのは、

[S]=3.0 mmol/L
v=30 μmol/min

です。

しかし、KmとVmaxはいずれも分かっていません。

1つの式に対して未知数が2つあるため、この情報だけからKmとVmaxを一意に求めることはできません。

ここで、

「[S]=3だからKm=3では?」

「v=30だからVmax=60では?」

と考えた方は注意が必要です。

[S]=Kmのとき、v=Vmax/2

という関係は正しいのですが、今回は[S]=Kmであるとは示されていません。

式を覚えるだけでなく、その関係を使える条件がそろっているかを見る必要があります。

ポイント:1組の[S]とvだけでは、KmとVmaxの両方は決まらない。

問3の解説

正答:3

国家試験で扱う基本的な非競合阻害では、

Kmは基本的に変わらず、Vmaxは低下する

と考えます。

しかし、

「Vmaxが低下する」

ことと、

「基質を増やしても反応速度が変わらない」

ことは同じではありません。

非競合阻害でも、基質濃度を増やせば反応速度は上昇します。

ただし、基質を十分に増やしても、阻害剤がない場合と同じVmaxには到達せず、より低いVmaxへ近づきます。

Km・Vmaxの変化を表だけで覚えるのではなく、Michaelis–Menten曲線の変化と結びつけると整理しやすくなります。

ポイント:Vmaxが低下しても、基質濃度と反応速度の関係がなくなるわけではない。

問4の解説

正答:3

Lineweaver–Burkプロットでは、

横軸=1/[S]
縦軸=1/v

です。

したがって、

となります。

よって、

横軸4.0、縦軸0.05

です。

ここで、

「横軸は-1/Kmでは?」

と思った方もいるかもしれません。

-1/Kmになるのは、直線を延長したときの横軸切片です。

実際の測定値をプロットするときは1/[S]なので、今回の値は+4.0です。

横軸の値と横軸切片は別のもの

と考えておきましょう。

ポイント:1/[S]と-1/Kmを混同しない。

問5の解説

正答:3

Kmが小さい酵素Aは、比較的低い基質濃度でも反応速度が上がりやすい特徴があります。

一方、酵素BはVmaxが大きいため、基質濃度を十分に高くすると、より大きな反応速度へ近づきます。

実際に比べてみましょう。

基質濃度を1 mmol/Lとすると、酵素Aでは、

酵素Bでは、

となり、この条件では酵素Aの方が速いことが分かります。

一方、基質濃度を8 mmol/Lにすると、酵素Aでは、

酵素Bでは、

となり、今度は酵素Bの方が速くなります。

「Kmが小さい方が速い」

「Vmaxが大きい方が速い」

と一つの数字だけで判断するのではなく、

基質濃度、Km、Vmaxを一緒に考える

必要があります。

この問題で少し時間がかかった場合は、KmとVmaxの意味は理解できていても、実際の問題の中で使うところにはもう少し練習の余地があるかもしれません。

ポイント:反応速度を比べるときは、KmやVmaxの一方だけで決めない。

5問を解いてみて

何問正解したかも一つの目安ですが、それ以上に、

「正解はしたけれど、少し迷った問題がなかったか」

を振り返ってみてください。

例えば、

  • Km・Vmaxの意味は分かっていたけれど、問5では少し考えた
  • Lineweaver–Burkの軸は覚えていたけれど、問4で横軸切片と迷った
  • 非競合阻害のKm・Vmaxは覚えていたけれど、問3の説明には自信がなかった

という場合です。

酵素反応速度論では、こうした

「知っているけれど、すぐには使えない」

ところが、問題になるとつまずきやすい部分です。

では、次のような問題はどうでしょうか

ここまでできていたら、次は少し条件が増えても自分で解けるかを確認する段階です。

例えば、

2つの基質濃度と反応速度が与えられたとき、KmとVmaxを求められるでしょうか。

KmとVmaxの変化だけを見て、競合・非競合・不競合阻害を区別できるでしょうか。

Lineweaver–Burkプロットの直線式が与えられたとき、KmとVmaxを読み取れるでしょうか。

酵素阻害とMichaelis–Menten式が一緒に出てきても、どの順番で考えればよいか判断できるでしょうか。

すぐに解き方が思い浮かぶものもあれば、

「意味は分かるけれど、実際に問題として出されたら少し考えそう」

というものもあるかもしれません。

このあたりは、解説をもう一度読むだけでなく、実際に何問か続けて解いてみると整理しやすい部分です。

もう少し問題で確認したい方へ

酵素反応速度論について、

基礎 → 計算 → 酵素阻害 → Lineweaver–Burk → 総合

の順に20問をまとめた演習教材も作成しています。

今回の5問とは別の問題を収録しており、

  • Michaelis–Menten式を使った計算
  • 複数の測定値からKm・Vmaxを求める問題
  • 3種類の阻害様式の判定
  • Lineweaver–Burkの直線式や切片
  • 複数の知識を組み合わせる問題

まで、少しずつ段階を上げながら確認できる構成です。

演習用20問では、基礎から計算、阻害、Lineweaver–Burk、総合へ進む構成になっています。

「内容は分かった。次は問題を解いて確認したい」

というときに使えるようにしています。

酵素反応速度論20問|問題の内容を見る

基本事項をもう一度確認したい場合

今回の問題で、問題演習以前に基本事項そのものが少し曖昧だった場合は、先に関連記事を確認してみてください。

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