酵素活性(U/L)の計算問題|臨床検査技師国試の過去問をもとに解説
酵素活性の計算問題では、U/L、μmol、nmol、吸光度、モル吸光係数など、いくつもの単位や数値が出てきます。
そのため複雑に見えますが、基本となる考え方はシンプルです。
1 U = 1分間に1 μmolを変化させる酵素活性
まずはこれを押さえましょう。
国家試験では、大きく分けると、
- 基質の変化量が直接与えられる問題
- 吸光度の変化から基質などの変化量を求める問題
があります。
この記事では、実際に出題された2問を使って、基本問題から順に解いていきます。
Contents
まず覚えること|1 U=1 μmol/min
U(unit)は酵素活性を表す単位です。
国家試験では、
1 U = 1分間に1 μmolの基質を変化させる酵素活性
と考えれば十分です。
一方、血清中の酵素活性は通常 U/L で表されます。
つまり、
U/L = 血清1 L当たりの酵素活性
です。
この2つの意味が分かれば、まず基本問題を解くことができます。
基本問題|第67回 臨床検査技師国家試験 午後 問40
血清 10 μL を使用して 10 分間の酵素反応を行ったところ、10 nmol の基質量が変化した。
酵素量〔U/L〕はどれか。
1.1
2.10
3.100
4.1,000
5.10,000
正答
3.100 U/L
です。
この問題では吸光度などを考える必要はありません。
「1分間に何μmol変化したか」を求め、それを血清1 L当たりに換算します。
STEP 1 1分間の基質変化量を求める
10分間で10 nmol変化しているので、
10 nmol ÷ 10分 = 1 nmol/min
です。
ここで、Uではμmolを使うため、
1 nmol = 0.001 μmol
と換算します。
したがって、
0.001 μmol/min = 0.001 U
です。
これは、問題で使用した血清10 μLに含まれる酵素活性です。
STEP 2 血清1 L当たりに換算する
血清10 μLをLに直すと、
10 μL = 1 × 10⁻⁵ L
です。
0.001 Uが1 × 10⁻⁵ Lの血清に含まれているので、
0.001 ÷(1 × 10⁻⁵)=100 U/L
となります。
したがって正答は、
3.100 U/L
です。
基本問題はこの式で整理できる
基質変化量が直接与えられている場合は、
酵素活性(U/L)
= 基質変化量(μmol)÷ 反応時間(min)÷ 試料量(L)
と考えることができます。
ただし、式そのものを覚えるより、
基質変化量 → 1分当たりにする → μmolにする → 試料1 L当たりにする
と順番に考えた方が、単位を間違えにくくなります。
発展問題|第71回 臨床検査技師国家試験 午前 問36
次は、吸光度から酵素活性を求める問題です。
血清量 0.05 mL、試薬量 3.1 mL、光路長 1.0 cm の条件で LD 活性を測定したところ、1 分間当たりの吸光度変化量が 0.020 であった。
NADH のモル吸光係数を 6.3 × 10³ L・mol⁻¹・cm⁻¹ とすると、活性値(U/L)はどれか。
1.20
2.50
3.100
4.200
5.500
正答
4.200 U/L
です。
先ほどの問題との違いは、1分間に何μmol変化したかが直接書かれていないことです。
そこで、
吸光度変化
→ 濃度変化
→ 物質量の変化
→ U/L
の順に求めます。
STEP 1 吸光度変化から濃度変化を求める
吸光度と濃度の関係は、Lambert–Beer(ランベルト・ベール)の法則で表されます。
A = εcl
それぞれ、
- A:吸光度
- ε:モル吸光係数
- c:濃度
- l:光路長
です。
今回求めるのは1分間当たりの濃度変化なので、
濃度変化
= 吸光度変化 ÷(モル吸光係数 × 光路長)
と考えます。
数字を代入すると、
0.020 ÷(6.3 × 10³ × 1.0)
= 3.17 × 10⁻⁶ mol/L/min
です。
1 mol=10⁶ μmolなので、
3.17 μmol/L/min
となります。
STEP 2 反応液全体では何μmol変化したかを求める
先ほど求めた3.17 μmol/L/minは、
反応液1 L当たり
の値です。
実際の反応液量は、
血清0.05 mL + 試薬3.1 mL = 3.15 mL
です。
3.15 mL=0.00315 Lなので、
3.17 μmol/L/min × 0.00315 L
= 0.00999 μmol/min
≒ 0.010 μmol/min
となります。
つまり、血清0.05 mLに含まれる酵素によって、
1分間に約0.010 μmol
変化したことになります。
したがって、この血清0.05 mLに含まれる酵素活性は、
0.010 U
です。
STEP 3 血清1 L当たりに換算する
問題で使用した血清は0.05 mLです。
0.05 mL=0.00005 Lなので、
0.010 U ÷ 0.00005 L
= 200 U/L
となります。
したがって正答は、
4.200 U/L
です。
2つの問題の違いを整理する
第67回と第71回は難しさが違いますが、考えていることは同じです。
| 問題 | 与えられているもの | 最初にすること |
|---|---|---|
| 第67回 | 基質変化量 | 1分当たりのμmolに直す |
| 第71回 | 吸光度変化 | Lambert–Beerで濃度変化に直す |
どちらも最終的には、
1分間に何μmol変化したか
を求めています。
そして最後に、
試料1 L当たり
へ換算すればU/Lになります。
つまり、酵素活性計算の本質は、
「μmol/minを求めて、試料1 L当たりにする」
ことです。
吸光度から求める問題はまとめて計算できる
考え方を理解した後なら、第71回のような問題は次の式でまとめて計算できます。
酵素活性(U/L)
=
1分間当たりの吸光度変化 ÷(モル吸光係数 × 光路長)
×(反応液全量 ÷ 試料量)
× 10⁶
今回の数字を入れると、
0.020 ÷(6.3 × 10³ × 1.0)
×(3.15 ÷ 0.05)
× 10⁶
= 200 U/L
です。
反応液全量と試料量はどちらもmLなので、この式では単位をそろえて比として使うことができます。
ただし、最初からこの式だけを丸暗記するより、
吸光度 → 濃度 → μmol/min → U/L
という流れを一度理解してから使う方が安全です。
酵素活性の計算で間違えやすい3つのポイント
1.nmol、μmol、molをそのまま計算しない
酵素活性のUではμmolを使います。
特に、
- 1 mol = 10⁶ μmol
- 1 μmol = 10³ nmol
の換算を確認しておきましょう。
第67回ではnmolからμmol、第71回ではmolからμmolへの換算が必要です。
2.反応液量と試料量を混同しない
第71回では、
反応液全量:3.15 mL
と、
血清量:0.05 mL
の両方を使います。
反応液量は、反応液全体で変化した物質量を求めるために使います。
試料量は、その活性を血清1 L当たりへ換算するために使います。
ここを区別できれば、計算の流れがかなり分かりやすくなります。
3.「1分当たり」になっているか確認する
1 Uは1分当たりの活性です。
第67回では「10分間で10 nmol」なので、まず10で割る必要があります。
一方、第71回では最初から「1分間当たりの吸光度変化量」が与えられているため、時間でさらに割る必要はありません。
問題文で時間がどのように与えられているかを確認しましょう。
まとめ
酵素活性(U/L)の計算では、まず、
1 U=1 μmol/min
を押さえましょう。
基質変化量が直接与えられている場合は、
基質変化量 → μmol/min → U/L
と進みます。
吸光度が与えられている場合は、
吸光度変化 → 濃度変化 → μmol/min → U/L
と一段階増えるだけです。
計算式を丸暗記するよりも、
「今求めている値の単位は何か」
を確認しながら順番に進めることが、酵素活性の計算問題を確実に解くポイントです。
