アミノ酸・タンパク質

【過去問】分子の大きさを分離分画の原理とするのはどれか。2つ選べ。

第66回 臨床検査技師国試 臨床化学 過去問-17

第66回 臨床検査技師国家試験(2020年実施) 午前 問題100

1. 逆相クロマトグラフィ
2. ゲル濾過クロマトグラフィ
3. アフィニティクロマトグラフィ
4. SDS-ポリアクリルアミド電気泳動
5. セルロース・アセテート膜電気泳動

 

Contents

正答

2: ゲル濾過クロマトグラフィ

4: SDS-ポリアクリルアミド電気泳動

以上の2つの選択肢が正しい。

解説

逆相クロマトグラフィーの原理

疎水的な相互作用によって目的分子を分離する方法であり、液体クロマトグラフィーの分離で頻用されている。

一般的には、シリカゲルに炭素数18(C18)程度のアルキル基を結合させた担体に目的分子を疎水的に結合させ、メタノールやアセトニトリルなどの溶出力の強い有機溶媒を用いて溶出・分離する。

  • 逆相クロマトグラフィー:疎水性で分離する方法
  • 順相クロマトグラフィー:親水性で分離する方法

 

ゲル濾過クロマトグラフィーの原理

分子ふるいの原理に基づいて、分子の大きさごとに分離する方法である。

多孔性ビーズ(小さな穴が無数にあいているビーズ)を充てんしたカラムに目的分子を流し込むと、ビーズの穴よりも小さい分子はビーズの中を通って流れていくが、ビーズの穴よりも大きな分子は穴に入れずビーズとカラムの隙間を流れていく。

その結果、ビーズの穴よりも大きな分子はより早くカラムから流れ出ていき、ビーズの穴よりも小さい分子は遅く流れ出ることになる。

分子の大きさによって溶出される時間差が生まれることから分離が可能となる。

 

アフィニティクロマトグラフィーの原理

目的分子と親和性(アフィニティー)を有する分子を用いて、特異的に分離する方法である。

最も代表的な方法は抗原抗体反応を利用するイムノアフィニティ―クロマトグラフィーである。

目的分子と結合する抗体をセファロースのようなビーズに結合させ、それを充てんしたカラムに目的成分を含む混合溶液を流し込むと、抗原抗体反応により目的分子のみがセファロースビーズに保持され、他の成分と分離することが可能である。

 

SDS-ポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE)の原理

ポリアクリルアミドゲルはが網目状の構造を有しており、そこにタンパク質の混合物を流すと、網目よりも小さい分子は早く移動し、網目よりも大きい分子は移動が遅くなる。

その結果、移動度の差が生まれ分離することが可能となる。

SDSの必要性

タンパク質は固有の立体構造を有しており、アミノ酸の長さと立体構造を取ったタンパク質の大きさは必ずしも比例しない。

また、各タンパク質の荷電状況は構成するアミノ酸次第であり、荷電状況により電気泳動で移動する度合いは影響を受けてしまう。

そのため、全てのタンパク質を均等な条件で分離するためには、全てのタンパク質の立体構造の解消と均等な荷電が必要となる。

SDSは、タンパク質に対する均等な荷電立体構造の解消の2点を同時に実現する上で非常に重要な役割を担っている。

SDSの働き

SDSは炭素数12の炭化水素に硫酸基を有する陰イオン性の界面活性剤である。

約1gのタンパク質に対して約1.4gのSDSが結合するため、質量に応じた陰イオンを各タンパク質に付加することになり、SDSと反応した全てのタンパク質は等しく負に帯電する。

また、SDSは主としてタンパク質のペプチド結合部分に結合するため、タンパク質内に斥力(マイナス同士が離れようとする力)が生じるため、立体構造が崩れ直鎖状の1本鎖構造へと変化する。

SDSだけでは、タンパク質の立体構造は完全に解くことはできないため、通常SDS-PAGEの際には試料に対して以下の操作を行う

 

  • 還元剤の添加:システイン同士が形成するジスルフィド結合(SS結合)はSDSでは解消することができないため、2-メルカプトエタノールやジチオスレイトールなどの還元剤を添加する。

 

  • 熱処理:SDSにより立体構造の解消は進むが、その効果を高めるため高温(100℃)で反応させることでタンパク質を熱変性させる。

 

セルロースアセテート膜電気泳動の原理

支持体としてセルロースアセテート膜を利用し、タンパク質の荷電量の差によって分離する方法である。

緩衝液としてベロナール緩衝液pH8.6が汎用され、タンパク質を負に帯電させ分離する。

この方法は、血清タンパク質(アルブミン、α-、β-、γ-グロブリン)の分画法として広く用いられている。