管理栄養士国家試験

【過去問】生体エネルギーと酵素に関する記述である。最も適当なのはどれか。 1 つ選べ。

第34回 管理栄養士国試 酵素, エネルギー過去問-3

第34回 管理栄養士国家試験(2020年実施)午前 問題20

1. クレアチンリン酸は、ATP の加水分解に用いられる。
2. 酸化的リン酸化による ATP 合成は、 細胞質ゾルで行われる。
3. 脱共役たんぱく質(UCP)は、ミトコンドリア内膜に存在する。
4. アイソザイムは、同じ一次構造をもつ。
5. 酵素は、触媒する化学反応の活性化エネルギーを増大させる。

 

正答

3: 脱共役たんぱく質(UCP)は、ミトコンドリア内膜に存在する。

以上が正しい。

解説

クレアチンリン酸の働き

クレアチンリン酸は主として骨格筋に存在する高エネルギー化合物である。

人体におけるエネルギー物質はアデノシン三リン酸(ATP)であり、ATPがアデノシン二リン酸(ADP)へと分解される際に放出されるエネルギーが様々な生命現象に用いられている。

クレアチンリン酸は、そのATPへと再生する役割を果たしており、クレアチンリン酸が分解されることで発生したリン酸がADPに付加されることでATPが合成される。

クレアチンリン酸の合成

クレアチンリン酸はクレアチンがクレアチンキナーゼによりリン酸化された分子である。

クレアチンリン酸の元となるクレアチンはアミノ酸であるグリシンアルギニンから合成されており、腎臓においてグアニジノ酢酸へと変換され、肝臓にてクレアチンとして合成される。

クレアチン合成については以下の問題解説で詳しく取り上げています。

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クレアチンリン酸はATPの再生に利用された後にクレアチンとなり、再度リン酸化されクレアチンリン酸となるか、非酵素的に脱水を受けてクレアチニンとなる。

クレアチニンの主たる産生臓器は筋肉であり、腎臓の糸球体でろ過された後に尿中へと排泄される。そのため、クレアチニンクリアランス腎機能の評価指標として用いられる。

 

酸化的リン酸化とは

酸化的リン酸化とは、ミトコンドリアの内膜上に存在するATP合成酵素がプロトンを利用してADPからATPを産生する現象であり、電子伝達系と共役している。

人体におけるATP産生の中心であり、高エネルギー化合物によるリン酸基の転移によってADPからATPを合成する基質レベルのリン酸化よりも一度に多量のATP産生が可能である。

 

脱共役タンパク質(UCP)とは

脱共役タンパク質(UCP)はミトコンドリアの内膜上に存在するタンパク質であり、プロトンを輸送する機能を有している。

酸化的リン酸化はミトコンドリアの内膜を挟んだプロトンの濃度勾配により生じるが、UCPはプロトンを移動させることでその濃度勾配を消失させ、電子伝達系とATP合成(酸化的リン酸化)を脱共役させる。

UCP1からUCP5までが存在するが、UCP1は褐色脂肪細胞に特異的に存在しており、活性化することでATPの変わりに熱産生をすることで体温維持に重要な役割を担うことが知られる。

 

アイソザイムとは

アイソザイムとは、同じ化学反応を触媒する異なる酵素タンパク質のことを指す。

アイソザイムの特徴

同じ基質と結合する酵素ではあるものの、酵素タンパク質を構成するアミノ酸配列はアイソザイム間で異なっているため、1次構造は異なっていると言える。

タンパク質の立体構造

  • 1次構造:アミノ酸配列
  • 2次構造:αヘリックスやβシートなどの規則正しい繰り返し構造
  • 3次構造:ジスルフィド結合などにより形成されるタンパク質全体の立体構造
  • 4次構造:複数のタンパク質(ポリペプチド)が会合したタンパク質複合体

酵素タンパク質を構成するアミノ酸配列が異なるため、基質との親和性(Km)についてもアイソザイムごとに異なる。

アイソザイムの具体例

解糖系の律速酵素であり、以下の反応を触媒するヘキソキナーゼが挙げられる。

グルコース + MgATP2- → グルコース6リン酸 + MgADP + H+

ヘキソキナーゼには4つのアイソザイムが存在するが、特に肝臓に存在するグルコキナーゼ(ヘキソキナーゼIV)はその他の臓器に存在するヘキソキナーゼとは基質との親和性が異なっている。

酵素名 基質 基質との親和性(Km) グルコース6リン酸との関係
グルコキナーゼ グルコース特異的 低い(Km 高い) 阻害されない
ヘキソキナーゼ ヘキソース

(グルコース含む)

高い(Km 低い) 阻害される

 

酵素と活性化エネルギー

酵素は、生体内の化学反応を触媒するタンパク質である。

触媒とは、それ自身は変化せずに化学反応の速度を高める物質

酵素は、基質から反応生成物を作り出す反応速度を高めるが、これは酵素が反応に必要な活性化エネルギーを低下させることで変換が生じやすくするためである。