第66回 臨床検査技師国家試験(2020年実施)午前 問題35
1. 約90%が細胞内に存在する。
2. 蛋白質との結合型が存在する。
3. 嘔吐により血中濃度が低下する。
4. α-アミラーゼの活性中心に含まれる。
5. アニオンギャップ値の算出に必要である。
Contents
正答
3: 嘔吐により血中濃度が低下する。
5: アニオンギャップ値の算出に必要である。
以上が正しい。
解説
クロールの生体内分布
生体内におけるクロール(クロライドイオン, Cl–)の供給源は食事由来のNaClであり、人体における電解質の中心成分である。
そのため、Cl–はNa+と共に大部分は細胞外液に存在する。
細胞外液に存在する陰イオンとしてはCl–が最も多い。
血漿の主たる緩衝成分であるHCO3–よりも多い点に注意。
一方、細胞内液については、全体の1%程度であり、その存在量は極めて少ない。
クロールの生体内での存在様式
クロールは大部分がNaClとして存在しており、水分や酸塩基の平衡などにおいて機能している。
また、胃酸であるHClの構成分子としても重要である。
タンパク質と結合している無機質としてはカルシウムが代表例。
体内クロール量の変動
Cl–は胃酸の構成イオンであるため、嘔吐により胃液を喪失することによりCl–が体内から失われることになる。
Cl–の喪失は代償的にHCO3–を増加させるため、血中のpHは上昇することになり、低クロール性代謝性アルカローシスの原因となる。
クロールとα-アミラーゼとの関係
αアミラーゼはα型のグリコシド結合を切断する加水分解酵素であるが、補因子としてカルシウムイオンとCl–が必要となる。
活性化にはどちらも必要だが、活性中心に含まれるのはカルシウムイオンである。
クロールとアニオンギャップ値
アニオンギャップは、通常の臨床検査では測定されない有機酸を表す指標である。
HCO3–とNa+ Cl–から計算され、主として代謝性アシドーシスの評価に用いる。
アニオンギャップ = Na+ – Cl– – HCO3– (正常値 12±2 mEq/L)
アニオンギャップの原理
血漿は電気化学的に中性であり、その中に存在する陽イオンと陰イオンは等量と言える。
Na+以外の陽イオンをUC、Cl–とHCO3–以外の陰イオンをUAとすると、
Na+ + UC = Cl– + HCO3– + UA
と見なすことができ、
Na+ – Cl– – HCO3– = UA – UC = アニオンギャップ
となる。
すなわち、アニオンギャップを求めることでUAの増加の有無を推定することが可能であり、代謝性アシドーシスを鑑別する上で有用である。