糖新生を行う臓器は?|基質・酵素・解糖系との違いを国試で解説
糖新生を行う主要な臓器は、肝臓と腎臓(主に腎皮質)です。
糖新生とは、乳酸、グリセロール、糖原性アミノ酸などからグルコースを合成する代謝経路です。特に絶食時など、食事から十分なグルコースを得られないときの血糖維持に重要な役割を果たします。
国家試験では、
- 糖新生を行う臓器
- 糖新生の材料
- 解糖系との違い
- 糖新生で働く酵素
- ATP・GTPの利用
- インスリンとグルカゴンによる調節
を関連づけて理解しておくことが重要です。
Contents
糖新生とは?
糖新生(gluconeogenesis)は、糖質以外の物質からグルコースを合成する代謝経路です。
主な材料には、
- 乳酸
- グリセロール
- アラニンなどの糖原性アミノ酸
があります。
絶食が続くと肝グリコーゲンだけでは血糖を維持できなくなるため、糖新生によるグルコース産生の重要性が高まります。
糖新生を行う臓器は肝臓と腎臓
国家試験では、
糖新生を行う主要な臓器=肝臓と腎臓
と覚えましょう。
肝臓
肝臓は、血糖維持における中心的な糖新生臓器です。
乳酸、アラニン、グリセロールなどからグルコースを合成し、血中へ供給します。
例えば、筋肉などで生じた乳酸は血液を介して肝臓へ運ばれ、糖新生によって再びグルコースへ変換されます。
この循環をCori(コリ)回路といいます。
また、骨格筋から運ばれたアラニンを肝臓で糖新生に利用する経路は、グルコース・アラニン回路と呼ばれます。
腎臓
腎臓も重要な糖新生臓器で、主として腎皮質で糖新生が行われます。
腎糖新生では乳酸やグルタミンなどが利用され、絶食の長期化や低血糖などの条件では、腎臓によるグルコース産生の重要性が高まります。
したがって、
「糖新生は肝臓だけで行われる」
という理解は誤りです。
国家試験ではまず、
肝臓+腎臓
の組合せを確実に覚えておきましょう。
なぜ骨格筋は主要な糖新生臓器ではない?
骨格筋にもグリコーゲンが存在し、糖代謝は盛んに行われています。
しかし、骨格筋は血糖維持のために遊離グルコースを血中へ供給する主要臓器ではありません。
重要な理由の一つは、骨格筋ではグルコース6-リン酸を遊離グルコースへ変換するグルコース6-ホスファターゼ活性が生理的に十分でないことです。
そのため、筋グリコーゲンは主に骨格筋自身のエネルギー源として利用されます。
国試では、
肝臓・腎臓 → 血糖維持に関与
骨格筋 → 自分自身で使うグリコーゲンを蓄える
と区別すると理解しやすくなります。
糖新生の材料は?
糖新生では、さまざまな物質を材料としてグルコースを合成できます。
| 糖新生の材料 | ポイント |
|---|---|
| 乳酸 | Cori回路を介して利用される |
| アラニン | グルコース・アラニン回路で肝臓へ運ばれる |
| グリセロール | トリグリセリド分解によって生じる |
| グルタミンなどの糖原性アミノ酸 | 特に腎糖新生でも重要 |
脂肪酸は糖新生の材料になる?
ここは国家試験で注意が必要です。
ヒトでは、一般的な偶数鎖脂肪酸から正味のグルコースを合成することはできません。
偶数鎖脂肪酸のβ酸化によって生じるアセチルCoAは、TCA回路へ入っても糖新生に必要な炭素骨格を正味では増やせないためです。
一方、トリグリセリドが分解されて生じるグリセロールは糖新生の材料になります。
したがって、
脂肪酸そのものとグリセロールは区別する
ことが重要です。
ロイシンは糖新生の材料になる?
ロイシンは糖新生の材料にはなりません。
ロイシンは代表的なケト原性アミノ酸だからです。
一方、アラニンやグルタミンなどの糖原性アミノ酸は、代謝されることで糖新生に利用できます。
国試では、
糖原性アミノ酸 → 糖新生に利用できる
ロイシン → ケト原性なので利用できない
と理解しておくと良いでしょう。
糖新生と解糖系の違い
解糖系では、
グルコース → ピルビン酸
の方向へ反応が進みます。
糖新生は全体としてその逆方向に見えますが、解糖系の単純な逆反応ではありません。
解糖系には不可逆な反応が存在するため、糖新生ではそれらの反応を別の酵素で迂回します。
これが糖新生を理解するうえで非常に重要なポイントです。
糖新生で重要な酵素とATP・GTP
解糖系の不可逆反応に対応する糖新生の反応を整理すると、次のようになります。
| 糖新生での反応 | 主な酵素 | 使用するエネルギー |
|---|---|---|
| ピルビン酸 → オキサロ酢酸 | ピルビン酸カルボキシラーゼ | ATP |
| オキサロ酢酸 → ホスホエノールピルビン酸 | ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK) | GTP |
| フルクトース1,6-ビスリン酸 → フルクトース6-リン酸 | フルクトース1,6-ビスホスファターゼ | ― |
| グルコース6-リン酸 → グルコース | グルコース6-ホスファターゼ | ― |
国家試験では、まず次の組合せを押さえておきましょう。
ピルビン酸カルボキシラーゼ → ATP
ホスホエノールピルビン酸カルボキシナーゼ → GTP
ピルビン酸からホスホエノールピルビン酸までの流れ
ピルビン酸からホスホエノールピルビン酸ができるまでには、2段階の反応が必要です。
ピルビン酸
↓ ピルビン酸カルボキシラーゼ(ATPを使用)
オキサロ酢酸
↓ ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(GTPを使用)
ホスホエノールピルビン酸
試験としては非常に出題されやすい点なので、
オキサロ酢酸 → ホスホエノールピルビン酸
の反応と、GTPを使用することを理解しておくことが重要です。
糖新生は細胞内のどこで行われる?
糖新生は、細胞質だけで完結する代謝経路ではありません。
反応は主に、
- ミトコンドリア
- 細胞質
- 小胞体
にまたがって進みます。
例えば、ピルビン酸カルボキシラーゼによる反応はミトコンドリアで行われます。
その後、多くの反応は細胞質で進み、最終段階ではグルコース6-リン酸から遊離グルコースが生成されます。
国家試験では、
糖新生は細胞質だけで行われるわけではない
と理解しておけばよいでしょう。
インスリンとグルカゴンは糖新生をどう調節する?
糖新生は血糖値に応じてホルモンによる調節を受けます。
国家試験では基本的に、
グルカゴン → 肝臓の糖新生を促進する方向
インスリン → 肝臓の糖新生を抑制する方向
と整理しましょう。
なお、グルカゴンは糖新生だけでなく、肝グリコーゲン分解などにも関与して血糖維持に働きます。
インスリンやグルカゴンによる血糖調節、グリコーゲン合成・分解との関係については、「血糖調節機構の組合せで誤っているのはどれか」でも詳しく解説しています。
第68回 臨床検査技師国家試験で確認
第68回臨床検査技師国家試験(2022年実施)午前 問題29
糖新生を行う臓器はどれか。2つ選べ。
- 脳
- 肝臓
- 心臓
- 腎臓
- 脾臓
正答
2.肝臓
4.腎臓
です。
1.脳
誤りです。
脳は大量のエネルギーを必要とする臓器ですが、全身の血糖を維持する主要な糖新生臓器ではありません。
2.肝臓
正しいです。
肝臓は主要な糖新生臓器です。
乳酸、アラニン、グリセロールなどからグルコースを合成し、血中へ供給します。
3.心臓
誤りです。
心臓は全身の血糖維持を担う主要な糖新生臓器ではありません。
4.腎臓
正しいです。
特に腎皮質で糖新生が行われます。
絶食が長くなるなどの条件では、腎糖新生の重要性が高まります。
5.脾臓
誤りです。
脾臓は主要な糖新生臓器ではありません。
国試で間違えやすいポイント
糖新生について、国家試験で間違えやすいポイントを整理します。
「糖新生を行う主要な臓器は骨格筋である」
→ 誤り。主要な臓器は肝臓と腎臓。
「糖新生は解糖系をそのまま逆向きに進む」
→ 誤り。不可逆反応は別の酵素で迂回する。
「脂肪酸はそのまま糖新生の材料になる」
→ 誤り。一般的な偶数鎖脂肪酸から正味のグルコースは作れない。
「ロイシンは糖新生に利用できる」
→ 誤り。ロイシンはケト原性アミノ酸。
「ピルビン酸からホスホエノールピルビン酸は1段階で作られる」
→ 誤り。オキサロ酢酸を経由する。
「オキサロ酢酸からホスホエノールピルビン酸を作る反応ではGTPを使う」
→ 正しい。
「グルカゴンは糖新生を抑制する」
→ 誤り。国試では糖新生を促進する方向と覚える。
まとめ
糖新生でまず覚えるべきなのは、
糖新生を行う主要な臓器=肝臓と腎臓
です。
さらに、
- 主な材料=乳酸・グリセロール・糖原性アミノ酸
- 糖新生は解糖系の単純な逆反応ではない
- ピルビン酸 → オキサロ酢酸ではATPを使う
- オキサロ酢酸 → ホスホエノールピルビン酸ではGTPを使う
- グルカゴンは促進方向、インスリンは抑制方向
- 糖新生はミトコンドリア・細胞質・小胞体にまたがる
まで理解しておけば、国家試験で出題される糖新生の基本事項を幅広く判断できるようになります。
