リポ蛋白(リポタンパク)は、水に溶けにくいトリグリセリドやコレステロールなどの脂質を血液中で運搬する粒子です。

国家試験では、主に次の5種類の違いが問われます。

カイロミクロン・VLDL・IDL・LDL・HDL

まず最も重要なのは、粒子径と比重の順番です。

粒子径:カイロミクロン > VLDL > IDL > LDL > HDL

比重:カイロミクロン < VLDL < IDL < LDL < HDL

つまり、基本的には粒子が小さく、タンパク質の割合が高くなるほど比重が大きくなると考えると整理しやすくなります。

リポ蛋白5種類の違いを一覧で比較

リポ蛋白 粒子径 比重 主な特徴 主なアポ蛋白 主な役割
カイロミクロン 最大 最小 食事由来TGが非常に多い ApoB-48、ApoC-II、ApoEなど 食事由来TGを末梢組織へ運ぶ
VLDL 低い 内因性TGが多い ApoB-100、ApoC-II、ApoEなど 肝臓で合成したTGを末梢へ運ぶ
IDL 中間 中間 VLDLよりTGが減少し、相対的にコレステロールが増加 ApoB-100、ApoE VLDLからLDLへの代謝過程の中間体
LDL 高い コレステロールに富む ApoB-100 コレステロールを末梢組織へ運ぶ
HDL 最小 最大 タンパク質割合が高い ApoA-I、ApoA-IIなど 末梢からのコレステロール回収に関与

すべてを暗記するより、

カイロミクロン・VLDL=TGを運ぶ

LDL=コレステロールを末梢へ運ぶ

HDL=コレステロール回収に関与する

という役割から理解すると覚えやすくなります。

カイロミクロン・VLDL・IDL・LDLの代謝の流れ

リポ蛋白は、それぞれ独立した粒子として存在しているだけではありません。

特にVLDL、IDL、LDLは代謝の流れとしてつながっています。

カイロミクロン

カイロミクロンは小腸で形成され、食事由来のトリグリセリドを運搬します。

成熟したカイロミクロンではApoC-IIがリポプロテインリパーゼ(LPL)の働きを促し、トリグリセリドが加水分解されます。

TGが減少するとカイロミクロンレムナントとなり、主に肝臓へ取り込まれます。

カイロミクロンの特徴的なアポ蛋白はApoB-48です。

VLDL

VLDL(very low density lipoprotein:超低比重リポ蛋白)は、肝臓で形成され、肝臓由来の内因性トリグリセリドを末梢組織へ運搬します。

VLDLでもLPLによってトリグリセリドが分解され、粒子は次第に小さくなります。

特徴的なアポ蛋白はApoB-100です。

したがって、

VLDLとは、肝臓で合成されたTGを末梢へ運ぶTG-rich lipoprotein

と整理するとよいでしょう。

IDL

IDL(intermediate density lipoprotein:中間比重リポ蛋白)は、VLDLからトリグリセリドが除かれて生じるVLDLレムナントです。

一部は肝臓へ取り込まれ、残りはさらに代謝されてLDLへ移行します。

したがってIDLは、

VLDLとLDLの中間

と理解すれば、名称も比重も覚えやすくなります。

比重も、

VLDL < IDL < LDL

の順です。

IDLにはTGとコレステロールの両方が含まれる

IDLはVLDLからTGが除かれる途中の粒子なので、トリグリセリドとコレステロールの両方を含みます。

VLDLと比べるとTGが減少し、相対的にコレステロールの割合が高くなります。

国家試験などでは、

「中間比重リポタンパクは、コレステロールとTGをともに比較的多く含む」

という点を押さえておくとよいでしょう。

ただし、IDLは均一な粒子ではなく、組成には幅があります。

そのため、コレステロールとTGの含有比が常に完全に同じと暗記するのではなく、「VLDLからTGが減少し、LDLへ移行する途中の粒子」と理解することが重要です。

LDL

LDL(low density lipoprotein:低比重リポ蛋白)は、VLDLからIDLを経て形成され、コレステロールを末梢組織へ運搬する役割を担います。

主要なアポ蛋白はApoB-100です。

ApoB-100はLDL受容体によるLDLの認識にも関係します。

HDL

HDL(high density lipoprotein:高比重リポ蛋白)は、5種類の中で最も小さく、最も比重の大きいリポ蛋白です。

タンパク質の割合が高く、主要なアポ蛋白はApoA-Iです。

HDLは末梢組織などからコレステロールを受け取り、肝臓への輸送に関与します。

ApoA-IはLCAT(レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ)の主要な生理的活性化因子です。

LCATの反応については、「レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ反応の生成物はどれか」で詳しく解説しています。

レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)反応の生成物は?【国試対策】レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)反応の生成物は、リゾレシチンとエステル型コレステロール(コレステロールエステル...

LDLとHDLは「善玉」「悪玉」?

国家試験では、

LDLコレステロール(LDL-C)=悪玉コレステロール

HDLコレステロール(HDL-C)=善玉コレステロール

という表現が使われることがあります。

LDLはコレステロールを末梢組織へ運搬し、血中LDL-Cの増加は動脈硬化性心血管疾患のリスクと関係します。

一方、HDLは末梢組織などからコレステロールを受け取り、肝臓への輸送に関与します。

そのため国試では、

「低比重リポタンパクは、善玉コレステロールと呼ばれる」 → 誤り

「高比重リポタンパクは、動脈硬化の原因となる」 → 誤り

と判断します。

「善玉」「悪玉」は役割を理解しやすくするための便宜的な表現として使用されています。

国試では粒子径・比重・タンパク質割合をセットで覚える

リポ蛋白の問題で特に頻出なのが、粒子径と比重の関係です。

粒子径

大きい

カイロミクロン

VLDL

IDL

LDL

HDL

小さい

比重

比重は反対です。

小さい

カイロミクロン

VLDL

IDL

LDL

HDL

大きい

タンパク質割合

タンパク質の割合も、基本的にはHDL側へ行くほど高くなります。

少ない

カイロミクロン

VLDL

IDL

LDL

HDL

多い

したがって、

粒子径だけ逆向き

と考えると覚えやすくなります。

トリグリセリドが多いのはカイロミクロンとVLDL

トリグリセリド(TG)については、まず、

カイロミクロンとVLDLはTG-rich lipoprotein

と理解しておきましょう。

ただし、運んでいるTGの由来が異なります。

  • カイロミクロン:食事由来(外因性)のTG
  • VLDL:肝臓由来(内因性)のTG

TGの割合は一般にカイロミクロンの方がVLDLより高くなります。

したがって国試では、

カイロミクロン > VLDL

と覚えておけばよいでしょう。

アポ蛋白で覚えるべき組合せ

国試では、まず次の4つを押さえておけば十分です。

アポ蛋白 関係するリポ蛋白・役割
ApoB-48 カイロミクロンの構造蛋白
ApoB-100 VLDL・IDL・LDLの構造蛋白、LDL受容体のリガンド
ApoC-II LPLを活性化
ApoA-I HDLの主要アポ蛋白、LCATの補因子

特に、

カイロミクロン → ApoB-48

VLDL・IDL・LDL → ApoB-100

という違いは重要です。

アガロースゲル電気泳動ではどう分離される?

アガロースゲル電気泳動では、リポ蛋白は電荷などの違いによって異なる移動度を示します。

国試で覚える基本的な位置は、

  • HDL:α位
  • VLDL:pre-β位
  • LDL:β位
  • カイロミクロン:原点付近

です。

陽極側への移動度は概ね、

HDL > VLDL > IDL > LDL > カイロミクロン

となります。

したがって、

VLDLはLDLより陽極側へ移動する

ことを押さえておきましょう。

第66回 臨床検査技師国家試験で確認

第66回臨床検査技師国家試験(2020年実施)午前 問題40

リポ蛋白について誤っているのはどれか。

  1. HDLはLDLよりも蛋白質含量が高い。
  2. IDLはLDLとVLDLの中間の比重をもつ。
  3. カイロミクロンはVLDLよりも粒子サイズが大きい。
  4. VLDLはカイロミクロンよりもトリグリセライド含量が低い。
  5. LDLはアガロースゲル電気泳動法でVLDLよりも陽極側に移動する。

正答

5.LDLはアガロースゲル電気泳動法でVLDLよりも陽極側に移動する。

が誤りです。

それぞれ確認しましょう。

1.HDLはLDLよりも蛋白質含量が高い

正しい記述です。

HDLはリポ蛋白の中でタンパク質の割合が最も高く、LDLより比重も大きくなります。

2.IDLはLDLとVLDLの中間の比重をもつ

正しい記述です。

IDLはVLDLが代謝されて生じる中間体で、

VLDL < IDL < LDL

の順に比重が大きくなります。

3.カイロミクロンはVLDLよりも粒子サイズが大きい

正しい記述です。

カイロミクロンはリポ蛋白の中で最も大きな粒子です。

粒子径は、

カイロミクロン > VLDL > IDL > LDL > HDL

です。

4.VLDLはカイロミクロンよりもトリグリセライド含量が低い

正しい記述です。

どちらもTGに富むリポ蛋白ですが、一般にカイロミクロンの方がTGの割合が高くなります。

また、

カイロミクロン=食事由来TG

VLDL=肝臓由来TG

という違いも重要です。

5.LDLはアガロースゲル電気泳動法でVLDLよりも陽極側に移動する

誤りです。

アガロースゲル電気泳動では、

VLDL=pre-β位

LDL=β位

に相当し、VLDLの方がLDLより陽極側へ移動します。

したがって、「LDLの方がVLDLより陽極側へ移動する」という記述は逆です。

国試で覚えるポイント

リポ蛋白の問題では、まず次の6点を確実に押さえましょう。

  • 粒子径:カイロミクロン > VLDL > IDL > LDL > HDL
  • 比重:カイロミクロン < VLDL < IDL < LDL < HDL
  • カイロミクロン=食事由来TG、VLDL=肝臓由来TG
  • IDL=VLDLからLDLへ移行する中間粒子
  • LDL=コレステロールを末梢へ運ぶ、HDL=コレステロール回収に関与
  • 電気泳動:HDL=α、VLDL=pre-β、LDL=β、カイロミクロン=原点

特に、

粒子径と比重は逆向き

という関係を理解しておくと、多くの選択肢を判断できます。

確認問題

リポ蛋白について正しいのはどれか。

  1. HDLは5種類の中で最も粒子径が大きい。
  2. カイロミクロンは肝臓で合成されたTGを主に運搬する。
  3. ApoB-48はLDLの主要アポ蛋白である。
  4. VLDLはアガロースゲル電気泳動でLDLより陽極側へ移動する。
  5. IDLはHDLより比重が大きい。

正答:4

VLDLはpre-β位、LDLはβ位に移動するため、VLDLの方が陽極側へ移動します。

まとめ

リポ蛋白は、まず5種類の順番を理解することが重要です。

カイロミクロン → VLDL → IDL → LDL → HDL

この順に、

粒子径は小さくなり、比重とタンパク質割合は大きくなる

と整理できます。

さらに、

カイロミクロン=食事由来TG

VLDL=肝臓由来TG

IDL=VLDLからLDLへの中間粒子

LDL=コレステロールを末梢へ運ぶ

HDL=末梢からのコレステロール回収に関与する

という役割を組み合わせれば、国家試験で問われるリポ蛋白の多くを、単なる暗記ではなく仕組みから判断できるようになります。