第66回 臨床検査技師国家試験(2020年実施)午前 問題40
1. HDLはLDLよりも蛋白質含量が高い。
2. IDLはLDLとVLDLの中間の比重をもつ。
3. カイロミクロンはVLDLよりも粒子サイズが大きい。
4. VLDLはカイロミクロンよりもトリグリセライド含量が低い。
5. LDLはアガロースゲル電気泳動法でVLDLよりも陽極側に移動する。
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正答
5: LDLはアガロースゲル電気泳動法でVLDLよりも陽極側に移動する。
以上が誤っている選択肢である。
解説
リポタンパク質を構成するタンパク質割合の要点
HDL(高比重リポタンパク)の主成分はタンパク質である一方、LDL(低比重リポタンパク)の主成分はコレステロールである。
タンパク質の含有量としては、HDLが約50%に対してLDLは約20%であり、LDL < HDLと言える。
各リポタンパク質の関係は以下のようになる。
タンパク質割合 少 | < | < | < | タンパク質割合 多 |
カイロミクロン (約2%) |
VLDL (約10%) |
IDL (約15%) |
LDL (約20%) |
HDL (約50%) |
各リポタンパク質を構成するアポリポタンパク質の内訳
HDL
アポリポタンパク質A-I, A-II, C, D, Eなどから構成されるが、そのうちA-Iが約70%、A-IIが約20%を占める。
LDL
アポリポタンパク質B-100が約98%を占める。
VLDL
B-100, C-I, C-II, C-III, Eなどから構成されるが、B-100とC-IIIがそれぞれ約40%を占め、Eが約10%、C-IIが約5%を占める。
カイロミクロン
ほぼ全てのアポリポタンパク質を含んでいる。
リポタンパク質の比重の要点
IDL(中間比重リポタンパク)は、VLDL(超低比重リポタンパク)を構成する中性脂肪がリポプロテインリパーゼにより分解され、脂肪酸が遊離してLDLへと変化していく過程の中間体(VLDLレムナント)である。
リポタンパク質の比重は上記のタンパク質の割合と相関し、各リポタンパク質の比重に関する関係をまとめると以下となる。
比重 小 | < | < | < | 比重 大 |
カイロミクロン | VLDL | IDL | LDL | HDL |
リポタンパク質の粒子径の要点
問題文に与えられているカイロミクロンはリポタンパク質の中でも最も粒子径が大きく、80-1000nmである。
粒子径は比重と反比例し、VLDLの30-80 nm程度であり、VLDLの方がカイロミクロンよりも小さい。
各リポタンパク質の関係をまとめると以下のようになる。
粒子径 小 | < | < | < | 粒子径 大 |
HDL | LDL | IDL | VLDL | カイロミクロン |
リポタンパク質のトリグリセリド含有量粒子径の要点
選択肢に挙げられているVLDLとカイロミクロンにおけるトリグリセリドの含有量については、それぞれ55-60%と80-95%である。
含有量にえて、トリグリセリドの由来にも違いがあり、VLDLは肝臓で合成された内因性のトリグリセライドを運搬するが、カイロミクロンは食物由来の外因性のものを輸送する。
アガロースゲル電気泳動法におけるリポタンパク質の移動度の要点
アガロース電気泳動により粒子径と荷電状態から分離が可能。
陽極 | ← | ← | ← | ← | 原点 | 陰極 |
HDL | VLDL | IDL | LDL | カイロミクロン |