共役酵素とは?|JSCC勧告法で使う・使わない酵素を国試問題で解説
“共役酵素”
名前は聞いたことがあっても、
「ASTは使う?」
「CKは?」
「LDは使わない?」
と聞かれると、急にあやふやになる人も多いのではないでしょうか。
臨床検査技師国家試験において、JSCC勧告法で共役酵素を使うか、使わないかはしばしば出題される問題です。
第67回では「共役酵素を用いないもの」、第71回では「2つ以上の酵素反応を利用するもの」という形で出題されています。
このテーマは、すべての測定反応を丸暗記するより、
「なぜ共役酵素を使うのか」
を理解したうえで、使わない3項目を先に押さえると整理しやすくなります。
Contents
国試問題|第67回 臨床検査技師国家試験 午後 問題36
日本臨床化学会〈JSCC〉勧告法で共役酵素を用いないのはどれか。
1.AST
2.AMY
3.CK
4.ChE
5.γ-GT
正答は、
5.γ-GT
です。
なぜγ-GTでは共役酵素が必要なく、ASTやCKでは必要なのでしょうか。
まず「共役酵素とは何か」から理解していきましょう。
まず押さえる|共役酵素とは
血清中の酵素活性を測定するときには、
目的とする酵素がどのくらい速く反応を進めるか
を測る必要があります。
酵素活性を反応速度から測定する考え方については、「終点分析法と初速度法の違い|0次・1次反応との関係を国試問題で解説」で詳しく解説しています。
ところが、目的酵素の反応そのものでは、吸光度の変化として測定しにくい場合があります。
そこで、
目的酵素の反応を別の酵素反応につなぎ、測定しやすい物質の変化に変換する
ことがあります。
このときに利用する酵素が共役酵素です。
イメージとしては、
目的酵素の反応
↓
共役酵素の反応
↓
NADH・NADPHなどの吸光度変化を測定
という流れです。
目的酵素の反応を、測定できる反応まで「つなぐ」と考えるとわかりやすいでしょう。
共役酵素と補酵素は違う
共役酵素と補酵素は別のものです。
共役酵素は、目的酵素の反応を別の酵素反応につなぐために利用する酵素です。
一方、NADHやNADPHは補酵素であり、共役反応の中で増減することで、その吸光度変化を測定に利用できます。
NADH・NADPHそのものが共役酵素ではない
と区別しておきましょう。
国試では「共役酵素を使わない3つ」を先に覚える
JSCC勧告法について国試対策として整理するなら、まず次の3つを押さえるのが効率的です。
- LD
- ALP
- γ-GT
この3つは、
共役酵素を使わない
と整理します。
一方、
- AST
- ALT
- CK
- AMY
- ChE
では、JSCC勧告法で共役酵素を利用します。
すべての共役酵素名を最初から覚えるより、
LD・ALP・γ-GTは使わない
を先に固定しておくと、国試問題をかなり解きやすくなります。
なぜLD・ALP・γ-GTでは共役酵素を使わないのか
共通しているのは、
別の酵素反応を介さなくても、測定可能な吸光度変化を得られる
ことです。
LD
LDは乳酸とピルビン酸の反応を触媒します。
この反応ではNAD⁺とNADHが直接関与するため、NADHの340 nm付近の吸光度変化を直接利用できます。
つまり、
目的となるLD反応
↓
NADHの変化を測定
とできるため、測定のために別の酵素反応をつなぐ必要がありません。
したがって、国試では、
LD → 共役酵素を使わない
と整理します。
ALP・γ-GT
ALPやγ-GTでは、酵素反応によって生じる生成物の吸光度変化を利用して活性を測定できます。
つまり、
目的酵素の反応
↓
測定可能な生成物
と直接つながるため、別の酵素反応を間に挟む必要がありません。
したがって、
ALP・γ-GT → 共役酵素を使わない
となります。
国試では、細かな反応式よりもまず、
LD・ALP・γ-GTは直接測定につなげられる
というイメージを持っておくとよいでしょう。
共役酵素を使う代表例|AST
反対に、ASTでは共役酵素を使います。
ASTが触媒する反応では、
アスパラギン酸+2-オキソグルタル酸
→ オキサロ酢酸+グルタミン酸
が生成します。
しかし、この反応だけではAST活性を連続的な吸光度変化として測定しにくいため、生成したオキサロ酢酸を別の酵素反応につなぎます。
代表的には、リンゴ酸脱水素酵素(MDH)によって、
オキサロ酢酸 → リンゴ酸
へ反応させます。
この反応に伴ってNADHが減少するため、
340 nm付近の吸光度の低下
を測ることができます。
吸光度変化から実際に酵素活性(U/L)を求める方法は、「酵素活性(U/L)の計算問題|臨床検査技師国試の過去問をもとに解説」で確認できます。
つまり、
AST反応
↓
リンゴ酸脱水素酵素などによる共役反応
↓
NADHの減少を測定
という流れです。
ASTそのものを直接見ているのではなく、AST反応によって生じた変化を別の酵素反応を通して測っていることがポイントです。
共役酵素を使う代表例|CK
CKも、共役反応を理解するのに適した例です。
CKの反応によってATPが生成すると、そのATPを利用してさらに反応をつなげることができます。
代表的な流れは、
CK
↓
ヘキソキナーゼ〈HK〉
↓
グルコース-6-リン酸脱水素酵素〈G6PD〉
↓
NADPHの増加を測定
です。
CK反応そのものを直接測定するのではなく、
CK反応で生じたATPを次の反応へ渡し、最終的にNADPHの変化として検出する
という仕組みです。
このように複数の酵素反応をつなげることで、目的酵素の活性を吸光度変化として測定できるようになります。
第67回の問題に戻ってみよう
ここまで理解すると、第67回の問題は簡単だと思います。
AST、AMY、CK、ChEでは共役酵素を利用します。
一方、γ-GTは共役酵素を使いません。
したがって、正答は
5.γ-GT
です。
ここまで理解できたら、少し聞き方を変えた問題も解いてみましょう。
第71回 臨床検査技師国家試験 午後 問題30
日本臨床化学会〈JSCC〉勧告法において 2 つ以上の酵素反応を利用しているのはどれか。 2つ選べ。
1.ALP
2.AST
3.CK
4.γ-GT
5.LD
正答は、
2.AST、3.CK
です。
先ほど覚えた「LD・ALP・γ-GTは共役酵素を使わない」を使います。
選択肢からこの3つを除くと、残るのはASTとCKとなり、これが正答となります。
第67回では、
「共役酵素を用いないもの」
第71回では、
「2つ以上の酵素反応を利用するもの」
と聞き方が変わっています。
しかし、問われている基本的な考え方は同じです。
JSCC勧告法と現在の測定法は分けて考える
ここは一つ注意しておきましょう。
今回の国家試験問題は、いずれも「JSCC勧告法」について聞いています。
一方、国内ではALPとLDについて、2020年4月からJSCC法からIFCC法への移行が始まり、2020年4月からJSCC法からIFCC法への移行が進められました。
したがって、
「現在の検査室ではすべてJSCC法を使っている」
という意味ではありません。
この記事で整理している、
LD・ALP・γ-GTは共役酵素を使わない
という組合せは、国家試験で問われるJSCC勧告法の知識として押さえてください。
実際、第71回でも2025年の試験でJSCC勧告法について出題されています。
まとめ
共役酵素とは、
目的酵素の反応を、測定しやすい別の酵素反応につなぐために用いる酵素
です。
国家試験では、まず次の組合せを押さえておきましょう。
共役酵素を使わない
- LD
- ALP
- γ-GT
共役酵素を使う
- AST
- ALT
- CK
- AMY
- ChE
ただし、単純に丸暗記するだけでなく、
別の酵素反応を介さず測定できる → 共役酵素は不要
そのままでは測定しにくい → 別の酵素反応につなぐ
と理解しておくと、聞き方が変わっても判断しやすくなります。
関連記事
酵素活性の測定について続けて確認する場合は、次の記事もおすすめです。
- 終点分析法と初速度法の違い|0次・1次反応との関係を国試問題で解説
- 酵素活性(U/L)の計算問題|臨床検査技師国試の過去問をもとに解説
- KmとVmaxとは?|ミカエリス定数・基質親和性との関係をわかりやすく解説
「酵素が何をするか」だけでなく、「その酵素活性をどのように測るか」までつなげて理解すると、臨床化学の問題が整理しやすくなります。
