第68回 臨床検査技師国家試験(2022年実施)午前 問題44
1. 測定 pH の変化に影響されない。
2. アイソザイム間では差異がない。
3. 大きいほど酵素と基質の親和性が高い。
4. 競合阻害物質の存在下では大きくなる。
5. 最大反応速度 < Vmax > の半分の速度である。
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正答
4:競合阻害物質の存在下では大きくなる。
以上が正しい。
解説
ミカエリス(Michaelis)定数(Km)は、酵素と基質の親和性を示す値である。
Kmは、酵素の最大反応速度(Vmax)の1/2を与える基質濃度であり、低いほどVmaxに到達するために必要な基質濃度が少ないことを示す。
すなわち、Kmが低いほど、その酵素と基質は親和性が高い、ということを意味する。
pHの影響
各酵素には至適pHが存在するため、反応溶液中のpHにより酵素反応は影響を受ける。
すなわち、酵素反応を反映するKmは測定pHの変化に影響される。
アイソザイム間のミカエリス定数
アイソザイムとは、同じ酵素反応を触媒する異なる酵素タンパク質のことを指す。
つまり、タンパク質としては一次構造(アミノ酸配列)から異なる別物である(サブユニットの組み合わせの違いも同様)。
当然、基質との反応性は各酵素により異なるため、アイソザイム間ではKmに差が存在する。
Kmの大きさ
先述の通り、Kmは酵素が最大反応速度の半分に到達するために必要な基質濃度である。
Kmが大きいということは、酵素が最大反応速度に到達するためには多量の基質が必要、ということを意味しており、その酵素と基質の親和性は低い(反応しにくい)ということを意味する。
競合阻害とKmの関係
競合阻害物質とは、酵素の活性中心(基質結合部位)に結合する阻害剤であり、基質と競合する。
わかりやすく例えれば、酵素というイスをめぐって、基質と競合阻害剤はイス取りゲームをするライバル関係と言える。
ライバル(阻害剤)がいなければ基質がイスに座れる訳だが、ライバルがいるせいでイスに座れないこともある。
基質がイスに座れる確率を高めるためには、ゲームに参加する基質の数を増やす必要がある。
理論上、ライバル(阻害剤)に対して圧倒的な数の基質がいれば、全てのイス(酵素)を基質で占拠できるはずである。
すなわち、競合阻害物質が存在する状況下では、Vmaxに到達するために必要な基質濃度が大きくなるため、Kmは大きくなる。
最大反応速度とKm
これも先述の通り、ミカエリス定数(Km)は基質濃度である。
速度ではない。