アンモニアが関係する酵素反応は?|5つの基質・酵素の組合せを国試で解説
アンモニアは、アミノ酸や窒素化合物の代謝を理解するうえで重要な物質です。
国家試験では、「どの基質と酵素の組合せでアンモニアが生じるか」という形で問われることがあります。
まず押さえておきたいのは、次の2つです。
- 尿素はウレアーゼによって分解され、アンモニアを生じる
- グルタミン酸はグルタミン酸デヒドロゲナーゼによる酸化的脱アミノ反応でアンモニウムイオンを生じる
一方、アミノ基転移反応ではアミノ基を別の分子へ「移す」ため、アンモニアを直接遊離するわけではありません。
この違いを理解しておくと、国家試験の選択肢を判断しやすくなります。
Contents
アンモニアが関係する酵素反応
今回の問題に登場する5つの基質と酵素を整理すると、次のようになります。
| 基質 | 酵素 | 主な反応 | アンモニアの生成 |
|---|---|---|---|
| 尿酸 | ウリカーゼ | 尿酸の酸化 | × |
| 尿素 | ウレアーゼ | 尿素の加水分解 | ○ |
| クレアチン | クレアチンキナーゼ | リン酸基の転移 | × |
| グルタミン酸 | グルタミン酸デヒドロゲナーゼ | 酸化的脱アミノ反応 | ○ |
| アスパラギン酸 | AST | アミノ基転移反応 | × |
したがって、この問題では尿素-ウレアーゼとグルタミン酸-グルタミン酸デヒドロゲナーゼがポイントになります。
第66回 臨床検査技師国家試験で確認
第66回臨床検査技師国家試験(2020年実施)午前 問題31
基質と酵素の組合せでアンモニアが関係するのはどれか。2つ選べ。
- 尿酸 ― ウリカーゼ
- 尿素 ― ウレアーゼ
- クレアチン ― クレアチンキナーゼ(CK)
- グルタミン酸 ― グルタミン酸デヒドロゲナーゼ
- アスパラギン酸 ― アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)
正答
2.尿素 ― ウレアーゼ
4.グルタミン酸 ― グルタミン酸デヒドロゲナーゼ
です。
それぞれの反応を確認していきましょう。
1.尿酸とウリカーゼ
アンモニアを直接生じる反応ではありません。
ウリカーゼ(尿酸オキシダーゼ)は、尿酸をさらに酸化してアラントインへ変換する酵素です。
ヒトでは機能的なウリカーゼを欠くため、プリン塩基の分解によって生じる尿酸が最終代謝産物となります。
プリン塩基から尿酸が生じるまでの流れについては、「核酸とその分解産物」で詳しく解説しています。
したがって、
尿酸 → ウリカーゼ → アンモニア
という関係ではありません。
尿酸と尿素は名称が似ていますが、代謝上は別の物質なので区別して覚えましょう。
2.尿素とウレアーゼ
アンモニアが生じるため正しい組合せです。
ウレアーゼは尿素を加水分解する酵素です。
反応を簡略化すると、
尿素 + H₂O → 2NH₃ + CO₂
となり、尿素1分子からアンモニアが生成します。
尿素はヒトではアンモニアを無毒化して排泄するために肝臓の尿素回路で合成されますが、ウレアーゼはその尿素を分解する側の酵素です。
なお、Helicobacter pyloriはウレアーゼによって尿素からアンモニアを産生し、胃内の酸性環境への適応に利用しています。
尿素 → ウレアーゼ → アンモニア
は、この問題で確実に覚えておきたい組合せです。
3.クレアチンとクレアチンキナーゼ
アンモニアは生じません。
クレアチンキナーゼ(CK)は、クレアチンとクレアチンリン酸の間でリン酸基を転移する反応を触媒します。
代表的な反応は、
クレアチン + ATP ⇄ クレアチンリン酸 + ADP
です。
この反応の中心はリン酸基の転移であり、アミノ基を外してアンモニアを生成する反応ではありません。
したがって、この組合せは誤りです。
4.グルタミン酸とグルタミン酸デヒドロゲナーゼ
アンモニウムイオンが生じるため正しい組合せです。
アミノ酸代謝では、多くのアミノ酸のアミノ基がアミノ基転移反応によってα-ケトグルタル酸へ集められ、グルタミン酸が生成します。
グルタミン酸はグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GDH)によって酸化的脱アミノ反応を受けます。
反応は、
グルタミン酸 + NAD(P)⁺ + H₂O ⇄ α-ケトグルタル酸 + NH₄⁺ + NAD(P)H + H⁺
と表すことができます。
つまり、グルタミン酸からアミノ基が外され、アンモニウムイオンが生じます。
国家試験では、
グルタミン酸 → 酸化的脱アミノ反応 → NH₄⁺
という流れを押さえておくことが重要です。
酸化的脱アミノ反応に関与する酵素については、「酸化的脱アミノ反応に関与しているのはどれか」でも詳しく解説しています。
なお、「アンモニア」と「アンモニウムイオン」は厳密には異なります。生理的pHでは大部分がNH₄⁺として存在しますが、国家試験では窒素代謝の説明として「アンモニア」とまとめて表現されることがあります。
5.アスパラギン酸とAST
アンモニアを直接生じる反応ではありません。
AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)は、アミノ基を別の分子へ移すアミノ基転移反応を触媒します。
反応は、
アスパラギン酸 + α-ケトグルタル酸 ⇄ オキサロ酢酸 + グルタミン酸
です。
アスパラギン酸のアミノ基はα-ケトグルタル酸へ移され、グルタミン酸になります。
したがって、アミノ基そのものがNH₃やNH₄⁺として直接遊離するわけではありません。
ここが、グルタミン酸デヒドロゲナーゼによる酸化的脱アミノ反応との重要な違いです。
アミノ基転移反応と酸化的脱アミノ反応の違い
国家試験では、この2つを区別できることが重要です。
アミノ基転移反応
アミノ基を別の分子へ移す反応です。
代表例はASTやALTです。
アミノ基は移動するが、アンモニアとして直接遊離しない
と覚えます。
酸化的脱アミノ反応
アミノ酸からアミノ基を外し、NH₄⁺を生成する反応です。
代表例がグルタミン酸デヒドロゲナーゼによるグルタミン酸の反応です。
したがって、
アミノ基転移:アミノ基を移す
酸化的脱アミノ:アミノ基を外してNH₄⁺を生じる
と整理するとわかりやすくなります。
国試で覚えるポイント
この問題では、すべての反応式を暗記する必要はありません。
まず次の3点を押さえておきましょう。
- 尿素+ウレアーゼ → アンモニア生成
- グルタミン酸+GDH → 酸化的脱アミノ反応でNH₄⁺生成
- AST・ALTのアミノ基転移反応ではアンモニアを直接遊離しない
特に、
アミノ基転移 → グルタミン酸へ窒素を集める → 酸化的脱アミノ反応でNH₄⁺を生じる
という流れまで理解すると、アミノ酸代謝の問題にも応用できます。
確認問題
次のうち、酸化的脱アミノ反応によってアンモニウムイオンを生じる組合せはどれか。
- アスパラギン酸 ― AST
- グルタミン酸 ― グルタミン酸デヒドロゲナーゼ
- クレアチン ― クレアチンキナーゼ
- 尿酸 ― ウリカーゼ
正答:2.グルタミン酸 ― グルタミン酸デヒドロゲナーゼ
グルタミン酸デヒドロゲナーゼはグルタミン酸の酸化的脱アミノ反応を触媒し、α-ケトグルタル酸とNH₄⁺を生成します。
まとめ
アンモニアが関係する酵素反応では、尿素-ウレアーゼとグルタミン酸-グルタミン酸デヒドロゲナーゼを押さえることが重要です。
特にアミノ酸代謝では、
アミノ基転移反応と酸化的脱アミノ反応の違い
を理解しておきましょう。
アミノ基転移反応ではアミノ基を別の分子へ移し、グルタミン酸デヒドロゲナーゼによる酸化的脱アミノ反応ではNH₄⁺が生じます。
この違いを理解しておけば、単純な暗記ではなく反応の種類から正答を判断できるようになります。
