第68回 臨床検査技師国家試験(2022年実施)午前 問題29
1. 脳
2. 肝臓
3. 心臓
4. 腎臓
5. 脾臓
Contents
正答
2:肝臓
4:腎臓
以上の2つが正しい。
解説
糖新生は、肝臓と腎臓で生じる生体内のグルコース合成反応である。
糖新生とは
乳酸やピルビン酸などを出発材料としてグルコースを生体内で再生する反応経路である。
絶食などによりグリコーゲンが枯渇した後の生体内の糖飢餓に対応するため生じる。
糖(グルコース)をピルビン酸まで分解してエネルギーを産生する経路が解糖系だが、基本的にはその逆反応として糖新生は進行する。
しかし、解糖系にはATPを利用する不可逆反応が存在するため、糖新生ではその部分を迂回して進行する。
糖新生にはATPが必要であり、エネルギーを消費してグルコースを再生している。
今回のような問題の他、糖新生に関する試験問題的な面で言えば、
- 解糖系の不可逆反応(ATPを利用する)をどのように遡るか
- 糖新生でATPを利用する酵素
- 糖新生が生じるのは細胞内のどこか
という3点をしっかり押さえることが重要となる。
糖新生が生じる臓器
肝腎要という言葉があるように、肝臓と腎臓は生体機能を維持する上で極めて重要な臓器であるが、この両者が糖新生を担う。
糖新生によるグルコースは通常、肝臓が約90%、腎臓が約10%を担うが、飢餓状態では腎臓の割合は40%まで上昇し、肝臓と腎臓での比率がほぼ同等となる。
肝臓での糖新生
生理的な出発材料として、
- 乳酸
- アラニン (アミノ酸)
が知られており、それぞれを利用する経路としてCori回路、アラニン回路として知られる。
肝臓においては、インスリンの増加により速やかに糖新生は抑制される。
腎臓での糖新生
生理的な出発材料は、
- 乳酸
- グルタミン
が知られている。
肝臓と異なり、腎臓での糖新生は食事摂取によりインスリンが上昇後もしばらく持続する。
グルタミンを出発材料とした場合、アンモニアが産生され尿中にアンモニウムイオンが排泄されるため、腎臓における糖新生は酸塩基平衡の維持にも寄与する。