第66回 臨床検査技師国家試験(2020年実施)午前 問題30(一部改変)
1. イヌリン
2. ヘパリン
3. アガロース
4. グリコーゲン
5. コンドロイチン硫酸
正解及び解説は下記参照
Contents
正答
1. イヌリンが正しい。
解説
問題としては非常にオーソドックスなものであり、代表的な多糖類のグリコシド結合のおさらいです。
イヌリンのグリコシド結合
イヌリンは、フルクトースの重合体(フルクタン)の1種であり、植物における貯蔵多糖。
30個程度のD-フルクトースがβ2, 1グリコシド結合により直鎖状に結合しており、末端にグルコースが1分子結合している。
言い換えれば、スクロース + 複数個のフルクトース。
人体にはβ2,1結合を切断する酵素が存在しないため分解されない。
また、腎臓の糸球体を濾過し、尿細管から再吸収されることもないため、糸球体濾過量を表わす指標して非常に有用であり、イヌリンは糸球体濾過値(GFR)の厳密な評価に用いられる。
ヘパリンのグリコシド結合
ヘパリンは、ウロン酸とアミノ糖からなるグリコサミノグリカンの一種であり、2糖単位(ウロン酸とアミノ糖)の繰り返し構造をとる直鎖状の複合多糖である。
結合はα1,4またはβ1,4結合グリコシド結合。
ヘパリンを構成する糖は以下の通り。
- ウロン酸:(硫酸化)イズロン酸またはグルクロン酸
- アミノ糖:(硫酸化)N-アセチルグルコサミン
ヘパリンの特徴として、ウロン酸の2位、N-アセチルグルコサミンの3位と6位がO-硫酸化、2位のアミノ基がN-硫酸化されるため、高度に負に帯電している。
上述したウロン酸とアミノ糖の組み合わせがヘパリンと全く同じ分子としてへパラン硫酸が存在する。
ヘパリンとへパラン硫酸の違いは硫酸化の度合いであり、へパラン硫酸の方がヘパリンよりも硫酸化の度合いが低い。
すなわち、ヘパリンの方がより負に帯電していると言える。
アガロースのグリコシド結合
D-ガラクトースと3,6-アンヒドロ-L-ガラクトースから構成される多糖類。
これらの単糖類がβ-1,4 および α-1,3 グリコシド結合で交互に結合している。
寒天の主成分であり、電気泳動によく用いられる。
グリコーゲンのグリコシド結合
グルコースのみから構成される単純多糖であり、グルコースを体内に蓄えておくことを目的とする貯蔵多糖である。
グリコーゲンは、α1,4グリコシド結合とα1,6グリコシド結合から形成されるアミロペクチン様の構造をしている。
コンドロイチン硫酸のグリコシド結合
ヘパリンと同じく、ウロン酸とアミノ糖からなるグリコサミノグリカンの一種である。
コンドロイチン硫酸は、β1,3またはβ1,4グリコシド結合で形成される。
ウロン酸とアミノ糖の2糖を基本単位とするのはヘパリンと同様だが、ポイントはアミノ糖としてN-アセチルガラクトサミンを用いる点。
構成する糖は以下の通り。
- ウロン酸:グルクロン酸
- アミノ糖:硫酸化N-アセチルガラクトサミン
ガラクトサミンの硫酸化されている部位により、
- コンドロイチン4硫酸(コンドロイチン硫酸A):N-アセチルガラクトサミンの4位が硫酸化
- コンドロイチン6硫酸(コンドロイチン硫酸C):N-アセチルガラクトサミンの6位が硫酸化
に分類される。